黄昏の夕日をあびながら
沈んでいこうとする陽に向かって
母が押す乳母車に揺られて行く
遠い道。
幼い頃の記憶として
何故かそんな情景が
心切ない気持ちと共に
残っている。
ふと気がつくと、その切なさは
〈いのち〉に押されながら
休むことなく死に向かって進んでいく
一生の予感から生まれてくるのかもしれない。
黄昏の夕日をあびながら
冷たい二月の風に向かって
しきりに顔を洗う一匹の猫。
短いその一生を生きようとする
野生の真剣さのようなものが
何故か心にまっすぐ訴えてきた。
2015.2.16