共存在企業研究会 開催のご案内
(場の研究所事務局)
場の研究所は、日本ナレッジ・マネジメント学会の後援のもとに、第2回共存在企業研究会を開催します。
場には、人びと(生きもの)の多様な主体性を消す「同調の場」と、それを活かす「共存在の場」の二種類があります。
これまでは場と言えば同調の場しかないように思われていましたが、これからの時代に本当に重要なのは共存在の場です。
その共存在の場をつくるために必要なことは、人びとが自己の〈いのち〉をコミュニティなどの居場所に与贈することであり、その結果、その居場所では、与贈された〈いのち〉の自己組織がおきて、「〈いのち〉の与贈循環」が自発的に生まれます。
この変化に対応するために、共存在原理に基づく新しい企業活動が必要です。
共存在原理に基づく企業活動とは、競争原理を乗り越え、社会的な共存在ネットワークを創出していくことであると考えます。
今後、企業、地域社会、国家、生態系、地球が存続し発展していくために必須の取り組みなのです。
本研究会では場の研究所理事長/所長清水博の講演をもとに、企業活動における具体的な問題を取り上げます。
競争原理の壁を乗り越え、共存在ネットワーク構築を実現するための具体的な戦略を、共創の原理から皆様と共に考えたいと願っています。
【日時、申込み】
・開催日:2016年4月9日(土)13:00-18:00(受付:12:30より)
・会場:エーザイ株式会社本社ホール/東京都文京区小石川4-6-10
・参加費:3,000円
・申し込み
申し込み方法は、以下の二通りです。
1)申し込みフォームより
2)メールで申し込み
場の研究所事務局へ下記をご記載のうえメールにてお申し込みください。
1.会員の種別(個人・法人) ※非会員のご記入は不要です。
2.氏名
3.所属先
申込先E-Mailアドレス:mizutaniba@gmail.com
申込メールの件名は「4.9参加申込」とご入力下さい。
【特定非営利活動法人 場の研究所】
新住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話:03-5980-7222
【プログラム概要】
第二回テーマ 共存在原理に基づく地域づくり
主催:場の研究所
後援:日本ナレッジ・マネジメント学会
協賛:株式会社博進堂、富士通株式会社、ヤフー株式会社、株式会社ワークハピネス、エーザイ株式会社
13:00-13:05 開会の辞
・高山千弘(エーザイ株式会社 執行役員 知創部長 )
13:05-13:15 後援団体からの挨拶
・花堂靖仁先生(日本ナレッジ・マネジメント学会 理事長)
13:15-14:15 セッション1
・信岡良亮氏((株)アスノオト 代表取締役・(株)巡の環 取締役)
『巡の環と考える新しい公共私』
14:15-15:00 セッション2
・清水博先生(場の研究所 理事長)
『居場所も共に共創する共存在企業』
15:00-15:15 休憩
15:15-16:30 セッション3
・ワークショップ:あしたのコミュニティーラボ(富士通)
『多様な関係性からあしたを創る』
16:30-17:50 セッション4
・ワークショップ:簡易体験ワーク
『共感がもたらす力』
閉会の辞
・前川泰久氏(株式会社本田技術研究所 社友)
※本プログラムは予定であり、内容が変更となる場合もございます。
★指定参考文献:清水 博 最新著書『〈いのち〉の自己組織』 東京大学出版会発行
共存在企業研究会の開催にあたり
近代文明は科学を柱にして非常に発展してきた。
しかし、科学の大きな特徴として「主客分離的現象」のみしか取り扱わないという性質がある。
即ち、科学は人間の主体性や意味性という主体的領域(内在的世界)を取り扱わない性質を持つのである。
この性質が、一方で科学的発見に客観性を生み出すと同時に他方では人間の主体的な問題を取り扱えないという論理的限界を生み出し、主体的領域から生まれる「情報の意味」を、情報の科学技術から閉め出している(科学が主体的領域に少しでも踏み込もうとすると、量子力学でよく知られる不確定な状態が出現する)。
その結果、個人の主体性と意味性に関する領域に手を差しのべられない限界が生じ、職場での心身症、老化に伴う認知症、孤独死、終末期医療など、近代医療の限界が問題化している。
科学の扱う対象が人間の主体的領域から分離されているという特徴は、また近代の社会科学に限界を与えている。
更にこの社会科学を論理的な基盤として成り立っている現代社会の法律、政治、経済にも、大きな影響を与えている。
科学の影響を受けた近代文明社会の特徴は、個人や法人が社会的に認められたルールの下でその支配領域を競争原理によって拡大していく権利と自由をもっていることである。
そのためには主体がもっている価値や意味が同質であることを前提にする必要がある。
この権利と自由を守るため、異質の価値観や意味づけをもつ存在を力によって排除していくのが近代社会である。
言い換えると科学の影響を受けた近代社会は、異なる価値観や意味論を持つ主体が、共に存在できる共存在原理を持ち得ないのである。
また自分たちの競争原理に従わない異質な存在を力で排除する方法しか知らない近代文明社会は、民族や宗教・宗派の間の紛争を拡大することはできても、鎮めることはできないのである。
ここでは競争を否定するのではなく、競争が競争原理によって支配されていることを問題視するのである。
共存在原理の下でおきる競争は、創造的発展のためにむしろ必要な条件なのである。
人間は独力で地球の上に存在し得るのではなく、多種多様な生きものが地球上に共存在してきたことで、現在、人間も存在しているのである。
異質を排除することしか知らず、異なる価値観や意味論を持つ多様な生きものと共存在する原理を知らない人間は、そのために自分自身が地球上で持続的に存在することができない状態、すなわち持続不能性の問題をつくり出しながら、その真の原因から目を逸らしているのである。
もはや近代文明の発展原理、即ちより多く占有するための競争原理が、存在の持続可能性に根本から矛盾することを認めざるを得ない。
異質の主体の間に、持続性のある存在をつくることが必要である。
既に共存在原理の発見と、その原理によって地球社会を構築することが文明の主題となっているのである。
すでに、「より多くもつことから、共に生きていくこと」に向かって、人びとの生活が底辺から変化し始めている。
このことが消費の行き詰まりの形で、先進国の市場経済に深刻な影響を与え始めている。
表層におけるマネーの見かけの動きと、庶民の生活の実相の間に矛盾が生まれており、バブル経済がはじけた前に現れた表層経済と実態経済の間のギャップに似た状況が生まれている。
ではどうすればよいか、そのための方針を立て、具体的に行動を考えなければならない状態にある。
先ずは、地球上で存在の持続可能性をつくりだす共存在原理とは何かを、単なる言葉だけではなく、具体的内容を論理的に明らかにする。
その後、情報技術、モノづくり、医療分野において、共存在原理を活用する共創的方法を発見的に研究する。
今般、エーザイ株式会社のご協力で、この様な会合が開催されますので、これからの地球規模での会社のあり方について、皆さまと共に議論し、また将来へのアクションへつなげていきたいと思います。
お集まり頂いた各企業の皆さまと共創の場をクリエーションしていければと考えております。
場の研究所 清水 博
【特定非営利活動法人 場の研究所】
清水 博
NPO法人「場の研究所」所長
東京大学名誉教授
【略歴】
1932年愛知県生まれ。薬学博士。
東京大学医学部(薬学科)卒業、同大学院修了後、東京大学理学部助手、千葉大学文理学部助教授、九州大学薬学部助教授、ハーバード大学研究員、スタンフォード大学研究員、九州大学理学部教授、東京大学薬学部教授、金沢工業大学「場の研究所」所長・同大学情報工学科教授を歴任し、2004年よりNPO法人「場の研究所」所長(理事長)。
主な著書に『生命を捉えなおす』(中公新書)、『生命知としての場の論理』(中公新書)、『生命と場所』(NTT出版)、『場の思想』(東京大学出版会)、『コペルニクスの鏡』(平凡社)、『< いのち> の普遍学』(春秋社)、『近代文明からの転回』(晃洋書房)など。