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「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」
〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。
(清水博)
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2017年4月のメールニュースをお届けいたします。
◎3月はテーマ:「人工知能(AI)と場の考え」ついて場の研究所にて開催。
講師は元NEC中央研究所のエンジニアで、脳型コンピュータの研究をされた松田雄馬博士にお願いしました。話題のAIについての考え方と、AIの対応可能な範囲などその将来性と場の考えとの関係についてお話いただきました。
15時から17時までは、前回のダーウィンルームでの清水先生のお話をベースに、過去の勉強会で使った「生命とは何だろうか」を紹介しながら、場の理論の紹介をいたしました。これは2002年頃の資料ですが、今、世界で起きている大きな変化や混乱を示唆する内容もあり、興味深いと思います。
ここに一部紹介します。
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「生命とは何だろうか」
人の一生は筋書きの決まっていないドラマである。人は誕生直後から、与えられた状況の中で、この生命のドラマを即興的に演じていかなければならない。生命とは、即興的なドラマを創り出す能力のことである。演じ甲斐のあるドラマを演じて終わることこそ、人生の課題である。人間に限らず、一個の細胞にも、一つの企業にも、また一つの社会や国家にも、さらにまた地球にも、それぞれのドラマがある。近代という時代は、一口に云えば、生命のドラマを人間が操作できるゲームであると誤解した時代である。その結果として、ゲームに勝って「人生の勝利者」になることが人間として生き甲斐のある生きかたであると考えてきたのである。生き甲斐ある人生とは、持つためのゲームに競争して勝つことであると、勝つために、わき目も振らずに生きる生き方、私はこれを「新幹線」と呼んでいる。
ドラマをゲームと混同して、操作と競争というゲームの方法によって生命のドラマを取り扱ってきたために、処理できない多くの問題が蓄積して行き詰まり現象おこしている。ゲームであれば、撃たれた敵は画面から消えてなくなる。しかしイスラエルとパレスチナの紛争では、互いに撃てば撃つほど憎しみが増幅されて、決して消すことができない影響をドラマの筋に与え、それぞれの文化を憎しみの色で染める可能性すら示している。またこれと同様な原理によって、世界にテロとその報復の限りない連鎖が広がる危険性があるのではないだろうか。これほどの大きな負の遺産を子孫に残すべきではない。
またさらに炭酸ガス、ゴミ、放射性廃棄物など、我々自身が存在することによって生じてきた問題を、操作と競争というゲーム的方法によって解決することができるだろうか。また経済のバブル化現象は市場がドラマの舞台としての本来の役割を放棄して、ゲームの対象に変化をする現象ではないだろうか。後で少し詳しく考えるが、倫理は生命のドラマの中で生まれる生命の全体的な活きである。したがってゲーム化した市場経済に参加をして生き残ろうと激しい競争をしている企業からは倫理感が消えるのは当然である。生命のドラマの演じ方を子供たちに教える人間の教育が家庭からも、学校からも、そしてまた社会からも消えて、ゲーム化した社会の競争に勝つための教育をサラブレッドのようにたたき込まれている。
東洋にはさまざまな思想や哲学があるが、それらには共通した基盤の上に打ち建てられたさまざまな建物のようである。その基盤を現代の言葉で表現すると、結局、「地球には大きな地球的生命がある」ということを認めるということである。これを地球的生命存在の基本公理と呼ぶことにしよう。西洋でも、地球は生きているというガイア思想が提出されていることから、東洋的な考えは東西に関わらず受け入れることができる考えである。この公理の上で、「人間はさまざまな生物と共に地球的生命を自己組織しながら、その地球的生命の活きの中で活かされて生きている」と考える。これを生命的存在の原理と呼ぶことにしよう。
東洋の地球的生命の存在という考え方についてもう少し補足してみよう。東洋の考え方では、人間の視点から見ると地球的生命がどのように見えるかということばかりでなく、同時に、地球的生命の視点から見ると人間がどのように見えるかということが重要なことと見なされている。このことが東洋に独特な生死観を与えてきたのである。その理由は、人間の生前にも、そして死後にも、地球的生命は継続して存在しているからである。これらのことは地球的生命を一人の人間の生命、また人間や生物の生命をその人間の人体を構成しているさまざまな細胞の生命に置き換えて考えてみるとよく理解できる。人間の生命は細胞の生命の足し合わせではなく、人間には、人間の生命と細胞の生命という質の異なる生命が二重に存在していることになるのである。これを生命の二重存在性の公理と呼ぶことにする。
細胞は人間の生命の中で生まれて、人間の生命の中へ死んでいく。人間の生命を持続的に継続するために死ぬのである。細胞がどこへ死んでいくかということまでを理解しなければ、細胞の存在意義が理解できない。それはガン細胞のように、自己中心的に生き続け、人間の生命の中へ死のうとしない細胞が存在するからである。このように人間の生命の中へ死ぬことができない細胞は、結局、人間の生命を殺し、自分自身も死ぬことになる。同様なことが人間の生命と地球的生命の関係にも当てはまると考えるのである。
生命の二重存在性という観点から考えると、死によって人間は地球的生命の中へ移行すると考えることができる。死後に移行する地球的生命は人間であろうと、それ以外の生物であろうと、まして人間の生前の社会的地位や財産がどうあろうと、区別することはないから、ここに命のある生き物の絶対平等の考えが生まれてくるのである。死から生を見るということは、地球的生命から人間の生命を見るということの重要な部分になるのである。
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以上ですが、今、求められていることだと感じました。
さて、松田さんの勉強会でのお話について、紹介したいと思います。但し、4月8日の共存在企業研究会で、ほぼ同じテーマで内容を深めての講演をお願いしていますので、項目のみとさせて頂きます。
説明内容:
松田様は、京都大学で地球工学、数理工学などを勉強されNECに就職、AI関係の仕事をされその後、再度研究を要望。電子工学研究のために、東北大学の大学院に入られた研究者です。以上の経歴を経て、専門は、「大脳視覚情報処理」と「脳型コンピュータ」で、近々、『人工知能の哲学』というご著書が出版されます。
今回は、人工知能はなにか?ところから、お話いただきました。
目次としては:
第一章 人工知能とは何か
第二章 「知能」の探究
第一節 「知能」を探る「視点」
第二節 「脳」から紐解く「知能」
第三節 「生命」から紐解く「知能」
第三章 人工知能が乗り越えるべき課題
という内容で、詳細を今回は割愛させて頂きますので、よろしくお願いいたします。
是非、共存在企業研究会での更なる議論を展開させていただく予定です。
勉強会では補足として清水先生から下記の様な内容で説明。
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◎人工知能(AI)と人間の知能(HI)
「見るもの」と「働くもの」
・見るもの:科学、現代医学、情報工学
(居場所から離れて居場所や対象を見る主客分離)
・働くもの:居場所での生活、東洋医学、〈いのち〉の科学
(居場所に存在して居場所とその存在者に働きかける主客非分離)
AI:見るものの知能(外側から主客分離的に観察していく知識)
HI:働くものの知能(内側に入って主客非分離的に獲得する知識)
(居場所と非分離的になるためには居場所への行為の与贈が必要!)
創造とは?(← HIにはできるがAIにはできないものは創造)
・居場所における新しいポジションと、既知のポジションからそこへ至る
・新しい道筋(論理、ルール)を発見すること。
新しいポジションの発見:場所的存在感情(パトス)が必要
新しい道筋の発見:場所的存在論理(ロゴス)が必要
・カント「天才の創造力とは、ロゴスとパトスを統合する構想力 である」
・三木清「構想力とは、ロゴスとパトスの統合によって、技術から法律まで新しい形をつくる社会技術の活きである」
・清水博「ロゴスとパトスの統合とは、場所的存在感情を鍵穴とし場所的存在論理を鍵として、両者を場所において相互誘導合致させることである」
共創とは?:居場所における集団的なロゴスとパトスの相互誘導合致。
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このあと、Q&Aとなり、多くのディスカッションができました。
今回は、AIと言われる言葉が、何でもできるように思われすぎており、今後の課題を明確にして進めるべきだと感じました。
AIというものの本質を再認識できたと思います。ご参加頂いた方々有り難うございました。
なお、第3回 共存在企業研究会については、このメールの追伸部分をご参照下さい。
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■勉強会のご案内
テーマ:仮題「<いのち>の医療(徒手療法から見えてくるもの)」
日時:4月28日(金曜)17時から19時30分までの予定です。
講師は仙台在住の徒手療法家の本多直人様から「手当と場の理論」についてお話いただく予定です。
4月は共存在企業研究会が月初めにあることから、勉強会は月末とさせて頂きます。
お間違いないようにお願いいたします。
勿論、清水先生からのコメントをいただきながら進めます。
従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて、17時より勉強会を行います。
場所:特定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
Email:info@banokenkyujo.org
参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円
申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。
(なお、飛び入りのお断りはしておりません。)
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■編集後記
今回は、松田雄馬様に貴重な「AIと場の考え方」の説明をしていただき、大変面白かったと言う声が多く聞かれました。4月8日の共存在企業勉強会にも是非、ご参加いただければと思います。(下記に添付)
次回の勉強会は、第4金曜日の4月28日(金曜)に開催いたします。テーマが仮題「<いのち>の医療(徒手療法から見えてくるもの)」ついてです。昨年のシンポジウムや、2月の勉強会でも医療と場の理論について議論がありましたが、4月は違った観点での内容となると思います。ご参加のほどよろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話・FAX:03-5980-7222
Email:info@banokenkyujo.org
ホームページ:http://www.banokenkyujo.org
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追伸:
追加情報として、共存在企業研究会の開催案内を紹介します。
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共存在企業研究会 開催のご案内 (場の研究所事務局)
場の研究所は、日本ナレッジ・マネジメント学会の後援のもとに第三回共存在企業研究会を開催します。共存在企業研究会は、人としての主体性と生き続けたいという願いを互いに大切にして、少数派や、弱い立場にある人者たちも差別なく共に存在していく共存在思想に基づく企業経営を目指した研究会です。現在、人工知能への期待の高まりから、人工知能を基軸に据えた事業展開を目指す企業が増えています。優れた記憶力と分析力をもっている人が多くの経験を積むだけでは、一流のプロ棋士にはなれず、さらに創造的な知能が必要であると世間では広く信じられています。
最近、その一流のプロ棋士が深層人工知能(deep AI)を相手に戦って、負けることが多くなってきたというより、勝つことが難しくなってきたことから、深層人工知能が複雑な思いで注目されています。また深層人工知能がこの調子で進歩をしていくと2020年には人工知能の知能が人間の知能に並ぶ「シンギュラリティ」(特異点)がやって来て、2045年には人間の知能の10億倍の能力をもつようになるとも言われています。このようなブームの尻馬に乗ったのか、人工知能による自動車の自動運転が近い将来にできるようになるというようなことをマスコミも言っています。もしもそうであるならば、人工知能を上手く取り込んでいかなければ、企業の経営も危ないということになるでしょう。
そこで今回の研究会では、人工知能の知性と、人間の知性とを比較して、それぞれの特徴を明らかにすることを第一の目標といたします。そもそも、この知性の性質が根本的に異なるものであれば、「シンギュラリティ」という考え方自体が成り立たないわけですし、またそれぞれの特徴を掴むことが、企業の人工知能導入の戦略にとって重要なポイントとなる筈です。今回はNECで人工知能を実際に研究していたばかりでなく、このような問題点をおさえて書かれた『人工知能の哲学』(東海大学出版から近々出版予定)の著者である松田雄馬博士による人工知能に関する講演と、その本を書評した場の研究所長清水 博による人間の知能の特徴に関する講演を企画いたします。
【日時、申込み】
・開催日:2017年4月8日(土)13:30-18:00
(受付:12:30より) ・会場:エーザイ株式会社本社ホール/東京都文京区小石川4-6-10
・参加費:3,000円
・申 込
場の研究所事務局へ下記をご記載のうえメールにてお申し込みください。 1.会員の種別(個人・法人) ※非会員のご記入は不要です。 2.氏名 3.所属先
申込先:平丸陽子(場の研究所)
E-Mailアドレス:bahiramaru@gmail.com
申込メールの件名は「4.8参加申込」とご入力下さい。
【特定非営利活動法人 場の研究所】
新住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話:03-5980-7222
ホームページ:http://www.banokenkyujo.org
(なおホームページからも申し込み可能です)
【プログラム概要】
第三回テーマ 『AIと場』
主催:場の研究所
後援:日本ナレッジ・マネジメント学会
協賛:株式会社博進堂、富士通株式会社、ヤフー株式会社、
株式会社ワークハピネス、エーザイ株式会社
13:30-13:35 開会の辞
・高山千弘(エーザイ株式会社 執行役員 知創部長 )
13:35-13:45 後援団体からの挨拶
・花堂靖仁先生(日本ナレッジ・マネジメント学会 理事長)
13:45-15:00 セッション1
・松田雄馬博士(元(株)NEC)
『AIの哲学』
15:00-15:15 休憩
15:15-16:00 セッション2 基調講演
・清水博先生(場の研究所 理事長)
『人間と場の知性』
16:00-16:15 休憩
16:15-17:45 セッション3
・ワークショップ:
『AIと場について』
閉会の辞 ・前川泰久氏(株式会社本田技術研究所 社友) ※本プログラムは予定であり内容が変更となる場合もございます。
★指定参考文献:清水 博 最新著書『〈いのち〉の自己組織』
東京大学出版会発行