· 

場の研究所メールニュース 2018年5月号

□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━ 

場の研究所 定例勉強会のご案内 

□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━ 

  ホームページ:http://www.banokenkyujo.org/ 

  ------------------------------------------------------------ 

「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」 

〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。 

                         (清水博) 

------------------------------------------------------------ 

 

2018日年5月のメールニュースをお届けいたします。   

 

◎2018年4月は従来の通り場の研究所で4月20日(金)

に勉強会を開催いたしました。

 

15時からは、前川理事からハイデッガーの「存在と時間」に

ついて少しわかりやすく解説を行い、勉強会での清水先生の

お話に出てくる言葉や考えの理解度を深められるように致し

ました。哲学的な専門用語の解説は、初めての方には有効と

考えました。

 

さらに、別のテーマとして「場と共創」について説明を実施

しました。この内容は、1997、1998年に場の研究所が中心と

なって、本田技研の元社長の久米是志氏らとともにスタート

した「場とシントピー日独会議」の中で、久米氏が講演した

資料を紹介したものです。内容的には最近話題になっている

"ワイガヤ"というコミュニケーションの場づくりの説明に

つながる内容もわかりやすくまとめてあります。また与贈の

考えがこの中に表現されているので、紹介した次第です。

 

論文の標題(目次)のみ紹介します。

◎「場とシントピー」日独会議 関連論文集PARTII 1997年度

 P45~52  金沢工業大学 場の研究所 1998年3月発刊

 

テーマ:「共創」と「場」   久米是志

1.「共創」の「場」の定義

2.「共創」の「場」の背景

 2.1重大な危機感

 2.2楽観主義

 2.3利己主義と利他主義のバランス

 2.4挫折の経験

3.「共創」の「場」の生成

 3.1「共創」の条件

  3.1.1共通の目的

  3.1.2平等性

  3.1.3異質性

 3.2異質性と自己否定

 3.3「成就」のプロセス

4.「神、きちがい、月ロケット、たぬき」異質なメンバーの

   比喩的考察

5.創造と破壊

 

17時からは清水先生から、前回の「生活体とその〈いのち〉

について」に関連する「存在と時間と創造」というテーマで

講義がありました。これはハイデッガーの「存在と時間」に

関連しながら「場の理論」と「生活体」という概念やキーである

与贈の考えをわかりやすく説明してくださいました。

★勉強会の内容

 

◎清水先生からの講義(配布の資料より)

 

存在と時間と創造

18.4.20  場の研究所 清水 博

 

存在:なぜ自分は「いま、ここ」に存在しているのか?

そして宇宙の歴史の中で、これまでと、これからには、

なぜ存在していないのか?なぜ、このことを確信できるのか?

 

時間性:現存在にドラマ的(歴史的)な意味を与える時間の

あり方。歴史的文脈。

舞台がドラマの進行を表していれば、それは舞台がその上で

演じられているドラマの時間性を表現していることになる。

 

現存在の時間性:宇宙における莫大な数の時間性の「いま、

ここ」における交点としての現存在。存在者の死はその宇宙に

おけるその一個の歴史的な交点の消失であり、消失した交点は

宇宙の歴史に過去にも出現していなかったし、二度と再び現れる

こともない。

 

生きること:宇宙の歴史に一度だけ「いま、ここ」に登場して、

無数の時間性の統合を自分なりに進める形で交点が存在すること。

 

死:宇宙におけるドラマ(歴史)の進行によって、一旦「いま、

ここ」において交わった幾つかの時間性が現存在の内部において

再び乖離していく宇宙的できごとであり、それは何時おきるとも

知れず、現存在はそれに従うしかない。自己の死は宇宙的関心で

ある。

 

創造と時間性:現存在が宇宙の時間性の集まりを、新しい集まり

に飛躍的に変化させて進めること。創造には二度とは存在しない

自己の生と(死を含む)未来の地平に対する宇宙的関心が必要。

 

創造における与贈:創造は新しい時間性をつくり出す活きでも

ある。新しい時間性をつくり出すためには、宇宙(場所的世界)

への〈いのち〉の与贈が必要である。自己の死への関心は、その

与贈を容易にする。

 

創造的創出:場所的世界に新しい形をつくり出し、そのことに

よって、場所的世界における現存在が飛躍的に変化をすること。

 

構想力の論理(三木清):新しい形は構想力の論理(パトスと

ロゴスを統合する論理)によって創出される。(パトスとロゴス

が相互に拘束し合って形をつくり出す。)

 

構想力を進める存在感情:構想力の論理はどのようにして存在

の時間性と関係してくるか?未来へ地平を広げていく宇宙に

開かれた存在感情(パトス)は未来へ発展する時間性を与える。

与贈によって存在感情が開かれていくから、互いに空間的拘束

を乗り越えてつながる。

 

共創と時間性:未来へ地平を広げていこうとするパトスによって

〈いのち〉が場所的世界に与贈され、個の間の空間的な拘束を

越える時間性が生まれる。これが場所的世界における個を役者

とするドラマの舞台の出現である。その舞台で役者としての個が

それぞれの存在を表現することが、地平を広げるパトスに拘束

された舞台(居場所)によって統合された新しいロゴスの生成

である。

 

志向性:場所的世界への与贈は、世界内存在における舞台(居場所)

の形をつくる。その舞台で、個の〈いのち〉がはたらく方向を

示すのが志向性ベクトルである。(場所的世界に与贈して、世界

の方から現存在へはたらきかけていく。)

 

時間性の生成:地平を広げる開放的パトスは、磁場の方向に磁石

が向くように、その方向に志向性ベクトルの方向を揃える。

これが、舞台が役者の志向性を揃えて、その上で表現されるドラマ

に方向性を与える。これが時間性の生成である。

 

集合的な時間性:集合的な時間性が生成されることによって、

場所的世界における共創が可能になる。独創では、この共創が個

人の脳内劇場でおこなわれる。

 

創造への問い:創造への問いかけは、場所的世界にどのように

与贈すればよいかという問いかけである。

(文責:場の研究所、清水 博:加筆)

----------------------------------------------------------   

■勉強会のご案内

日時:2018年5月18日(金曜日)大塚の「場の研究所」開催。

17時から19時30分までの予定です。

(従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて17時より勉強会

を行います。)

 

テーマ:「Dasein技術としての与贈」

副題「与贈が出現させる隠れた存在次元のイメージ」

 

「生活体」や「存在と時間」について、最近議論しておりますが

これをさらに深化させて、イノベーションや組織における共創に

結びつける新しい糸口を探る議論をしていきたいと考えています。

 注:Dasein(ダーザイン)とはハイデッガーが提唱した言葉で

   「いまここの場にある」という現在の存在を意味するもので

   「現存在」と言われています。(ドイツ語)

 

場所:特定非営利活動法人 場の研究所

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

Email:info@banokenkyujo.org

参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円

申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。

  (なお、飛び入りのお断りはしておりません。)

 

■編集後記

新年の4月は場の研究所で勉強会を実施いたしました。今回は

清水先生がハイデッガーの論文の「存在と時間」をベースとして

生活体の考え方を別の角度から説明を整理してくださいました。

15時からのワイガヤ時間にて、ハイデッガーの「存在と時間」の

説明と「場と共創」の説明により参加者の理解度が向上したので

あれば幸いです。

 

5月は従来通り第3金曜日の18日に場の研究所で開催します。

みなさまのご参加のほど、よろしくお願いいたします。

 

情報:「場の研究所のシンポジウム開催」についてのお知らせ

 

9月に従来通りエーザイ(株)と共催でシンポジウムを開催いたします。

日時:2018年9月1日(土曜)13:30-18:00

場所:エーザイ株式会社 大ホール(東京都文京区小石川4-6-10)

是非ご参加をよろしくお願いいたします。

詳細は別途ご案内いたします。(ホームページ含)

----------------------------------------------------------

 

定非営利活動法人 場の研究所

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

電話・FAX:03-5980-7222

Email:info@banokenkyujo.org

ホームページ:http://www.banokenkyujo.org