このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、 「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に 送付させていただいています。 □━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□
場の研究所 定例勉強会のご案内
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「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」
〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。
(清水博)
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■2019年8月のメールニュースをお届けいたします。
◎2019年7月の勉強会は「場の研究所」で7月19日(金)15時から19時30分まで開催しました。15時からワイガヤ的に議論を進めて、従来通り17時より勉強会を行いました。 まず、15時からは、今回も、先月に引き続き、研究員の小林研究員から、「やさしい場の理論」を参加者で読みながら議論しました。
この「やさしい場の理論」は「場の研究所」のスタッフだった、水谷仁美さんが清水先生の理論をベースに2015年にわかり易く資料化したものです。今回は初参加の方にも理解していただけるように、また先月参加された方々は復習の意味を踏まえ〈いのち〉について説明していきました。
そして、前回も説明してきた「見えるもの」:「存在者」と「見えないもの」すなわち「存在」というような紹介をしながら進めました。特に、「意味」は見えないので「暗在的」、「記号」は見えるので「明在的」であること、現在の「多数の原理」から「多様の原理」という時代になるべきであるという説明など清水先生が具体的にされて、より理解度が上がったと思います。
●小林さんコメント:
「やさしい場の理論」の復習的な読み合わせからスタートしました。
「〈いのち〉の定義」、「明在と暗在」、「近代文明の命の概念と場の理論の〈いのち〉の概念」と進んでいく中で、今回の15時からの会は、少し哲学カフェのような対話の場となりました。それぞれの考える「暗在的」についての意見交換は、一人ひとりの具体的な話で表されており、とてもよい時間だなぁ、と嬉しくなりました。
暗在的の理解、場の理論の〈いのち〉の概念の理解の難しさは、難解であるということではなく、これまでの自分の考えの土台とは違う基盤を作る必要が在るという点ではないだろうか、と改めて思いました。
それは、「やさしい場の理論」の中の「ここで認識を改める気持ちになって読んでいただきたいです」という一文に、参加者のお一人が、「この認識を改めるということは、これまでの自分の人生を否定することと同じと言ってよく、とても難しい(でも、そうする大切さも分かる)」とおっしゃったことから感じたことでもあります。
存在は暗在的で自己の内部に存在しています。暗在的を理解しようとして、見えないことを見えることに置き換えて理解しようとしてしまうやり方は、存在を存在者として語ることに通じますが、同時に生きにくさを生み出します。
これをどうストップするかが、ここで肝心なことといえるのではないでしょうか。そして、この勉強会で何を学んでいるのか、というと、この見えないことを見えないことのままに捉え扱い、他者と話ができるようになる、ということも一つなのではないかと思いました。
以上。
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★17時からの清水先生による勉強会
テーマは「自己と存在の宇宙」で、先生が作成されたプリントをベースに進めました。主観的宇宙と客観的宇宙の話から始まりました。当日の資料をベースに先生がわかり易くした内容を下記に紹介いたします。
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「自己と存在の宇宙」
人間をはじめ、さまざまな動物が一つの場所に存在しているときには、「この場所で自己がこのような行動をすると、どういうことがおきるか」と、未来におきるできごとへの見当を付けながら行動します。生きものに、この未来のできごとへの見当を与えるはたらきを見当識と呼びます。たとえば式場の種類によって、私たちの気持ちが変わることからも分かるように、場の状態は見当識を与えるはたらきをします。
人間が精神的に成長して青年になってくると、哲学への目覚めがおきます。それは自己の存在への目覚めです。「自分自身はこの広大な宇宙の歴史のなかで過去に存在したことがなく、また未来に再び存在することもない唯一の存在者として、宇宙の「いま、ここ」に、極めて短い時間の間だけ存在しているもので ある。その自己に死がおきるのは何よりも確実であるが、それが何時おきるかは不明で、今日おきるかも、また明日おきるかもしれない」という形で、自己の人生への見当識を哲学的に受け入れていきます。この自己の存在への自覚をもつことによって、自己の人生を意義深く全うしたいという気持ちが湧いてくるわけですが、ここで自己の人生に見当識を与える宇宙は「主観的宇宙」と呼ばれるものであり、科学が明らかにしていく「客観的宇宙」とは異なるものです。
自己の存在という「鍵」に対して「鍵穴」となって、「明日の世界」への見当識を与える相互誘導合致の活きを生み出すことができる宇宙は主観的宇宙であって、客観的宇宙ではありません。この宇宙的な相互誘導合致から、真善美も生まれます。存在の観点から見ると、自己と宇宙は鍵と鍵穴の関係になりますが、宇宙の存在者という科学的(主客分離的)な観点から見ると、自己は宇宙の超々極微の部分にしかすぎません。なぜこのように大きな差異が生まれるのでしょうか。
それは客観的宇宙が科学的(客観的)に確認される宇宙であるのに対して、主観的宇宙は自己の存在に大きな意味を与えるように自己によって構成される人生という「〈いのち〉のドラマ」が演じられる「劇場」であるからです。つまり、主観的宇宙は、自己が生きていく「人生」という〈いのち〉のドラマが演じられる----したがって人生というドラマが日常的に演じられていく 「舞台」(場)がその中にある----壮大な「劇場」として自己によって創出される「宇宙」なのです。
アルツハイマー型の認知症では、場所的な情報を表している大脳旧皮質の海馬という組織が障害を受けることによって、相互誘導合致がおきにくくなるために、場所に対する見当識の活きや、場所的な真善美に対する感覚が衰えて、徘徊やいろいろな障害が現れるのではないかと思われます。このことから推定すると、主観的宇宙は海馬中心に自己の身体につくられる内在的宇宙です。それは、自己がその人生を未来に向かって生きていくときに、自己の人生という鍵の形を鍵穴として誘導する哲学的な見当識を与えます。
一方、自己の存在という鍵は、鍵穴として主観的宇宙という劇場に生まれる場(舞台)と相互に誘導し合いながら、その具体的な形(人生)を決めていきます。その舞台が存在する主観的宇宙(内在的宇宙)がピカートの「沈黙の世界」に相当しており、それが言語をはじめとして、その人の〈いのち〉の ドラマに根源的な意味を与えます。(ピカート『沈黙の世界』みすず書房)
これらのことを、人間と情報の関係から振り返ってみましょう。「存在者としての情報」は意味をもたない記号であり、「存在としての情報」はその意味です。したがって記号に意味を与えるためには、その記号を相互誘導合致によって位置づける「舞台」(場)が必要になります。ピカートの「沈黙の世界」(暗在的世界)は、その舞台にさらに深い哲学的または宗教的な意味を与える「劇場」です。
またピカートが『沈黙の世界』のなかでいう「騒音」は、このような「劇場」に場所的に位置づけられていないために表面的な意味しか表現できず、二度とない貴重な人生の意味をしっかり語ることができない言語です。このような騒音が人間の社会に溢れると、〈いのち〉と社会の関係がうすれていきます。情報化していく資本主義経済の拡大競争にともなって、急速に世界に増えていくものがこの「騒音」です。それは使い捨てられていく記号ですが、その記号を足場にして、グローバル化した資本主義社会が巨大な蜃気楼のように地球の上に現れているのです。
その蜃気楼のような社会で見失われていくものが、人間の〈いのち〉の存在です。〈いのち〉とのつながりをもたないその社会では、人間はその存在を無視されて「働く存在者」と見なされ、AIロボットと実質的に変わらないような存在意義しか与えられないからです。
現代社会のこの蜃気楼的な状態から抜け出すために、何人かの人びとの〈いのち〉のために、社会的に開かれた居場所(〈いのち〉のオアシス)をつくって、個人々々がその居場所へ〈いのち〉の与贈をおこなうことで、〈いのち〉の自己組織によって生まれる場を共有する試みがさまざまな形で試みられるようになってきました(清水 博『〈いのち〉の自己組織』東大出版会)。 そして居場所に生まれる場(居場所の〈いのち〉)にそれぞれが相互誘導合致的に包まれることによって、互いの内在的宇宙(沈黙の世界)をつなぐ試みがなされています。〈いのち〉のオアシスでは、それぞれの内在的宇宙が互いに開かれることが必要で、そのために互いの話を傾聴し合うことが必要ですが、存在の多様性が重要であることからも、内在的宇宙が同じになる必要はありません。
現在社会の深刻な特徴は、このような〈いのち〉のオアシスづくりを、個人のレベルでいろいろ実行していかなければ、人間らしい意味のコミュニケーションができなくなっているために、共に生きていくことさえ難しくなってきていることです。ナチの強制収容所における過酷な生活にたえて生き延びたフランクルがいうように、存在者として生きていくことが困難な環境で生き続けていくためには、それぞれの日常的な生活の場と内在的宇宙とのつながりをつくって、〈いのち〉のドラマを積極的に演じていくことが必要でした。 (ヴィクトール・フランクル『夜と霧』みすず書房)
〈いのち〉のオアシスは、人間の社会の情報的構造を底辺から変えていく活きをしていく可能性があります。 (〈いのち〉のオアシスについては、9月7日にシンポジウムを開く予定です。)
以上
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■2019年8月の勉強会は中止いたします。
8月はお盆の時期と第3金曜日が当たるため中止となります。その代わりというわけではありませんが、毎月第2水曜日に開催している「哲学カフェ」も、同様の理由から、第一水曜日に変更したいと思います。ご了承ください。
従って、8/7(水)14時から「哲学カフェ」開催となります。イベントはこれだけです。
9月は、9月7日(土曜日)にシンポジウムを開催します。
詳細は後述してありますので、ご参照ください。
そして、第2水曜日の「哲学カフェ」はシンポジウムの終了後すぐですので中止致します。第3金曜日の20日は「勉強会」の開催予定ですが、勉強会ではなく「哲学カフェ」にして、多くの皆さんとシンポジウムの振り返りをしたいと考えています。また、ご案内を9月のメールニュースで致します。
■編集後記 今回も15時から「やさしい場の理論」について、「存在」と「存在者」というように、「見えないもの」と「見えるもの」を明確にいきながら、「居場所の〈いのち〉」について理解をしてもらいました。
7月に続き、多くの方の参加をいただき、大変密な議論ができました。勉強会の感想として、とても来て良かったという声もいただきました。
8月は上記の通り、8月7日の「哲学カフェ」のみです。また、9月7日開催のシンポジウムに多くの参加を、是非、よろしくお願いいたします。
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■8月のイベント:「哲学カフェ」
◎日時:8月7日(水曜日)14時から17時ごろ
◎場所:場の研究所(地下会議室)
特定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
TEL:03-5980-7222
◎会費:2000円
◎参加申込方法と詳細:
下記「場の研究所の哲学カフェ」ページをご覧ください。
また、参加申込は、同ページ申込フォームよりお申込ください。
https://www.banokenkyujo.org/cafe/
■9月のイベントのご案内
★場のシンポジウムのご案内
場の研究所では、以下の日程で
「第4回 場のシンポジウム 2019 」を開催します。
場のシンポジウム 2019「〈いのち〉のオアシス」
〜生きにくい社会の形を底辺から変えていく〜
〈シンポジウム開催にあたって〉
2016年より、年に一度、場の研究所の活動の基点として、「場のシンポジウム」を開催しており、今年は、第4回となります。
今年のシンポジウムの趣旨は…。
環境が厳しく自己の〈いのち〉を維持することが困難な状態になると、人は居場所をつくり、その居場所に自己の〈いのち〉を与贈しようとする本能的な活きをもっています。自己の〈いのち〉を与贈することによって、自己の〈いのち〉
を守るのです。ここでは、これら居場所を「〈いのち〉のオアシス」と呼んで
みようと思います。市場主義経済の歪みによって、社会的に利己的な動きが強まってくると、その裏でさまざまな「〈いのち〉のオアシス」が社会に生まれて、社会のシステムを底辺から変えていく活きをします。場の研究所のシンポジウムでは、その原理と「〈いのち〉のオアシス」の実例を紹介しながら、これからの社会の動きと期待について話し合い、自己の利益中心的な市場原理を乗り越えるための形を、未来に向かってはっきりと主張していきたいと思います。
〈いのち〉:自己の存在を継続的に維持しようとする能動的な活き
与贈:見返りを期待することなく与え贈ろうとすること
以上。
(場の研究所 所長 清水 博)
〈開催概要〉
場のシンポジウム 2019「〈いのち〉のオアシス」
〜生きにくい社会の形を底辺から変えていく〜
日時:2019年9月7日(土曜)13:00(開場)13:30-18:00
場所:エーザイ株式会社 大ホール(東京都文京区小石川4-6-10)
主催:NPO法人場の研究所
共催:エーザイ株式会社
参加費:一般 3,000円 会員 2,500円 学生 1,000円
(※シンポジウムは、どなたでもご参加いただけます。)
(※ 参加申込方法は、追って場の研究所ホームページまたは メールニュースにてお知らせいたします。)
場のシンポジウム2019の最新情報は、以下のURLから。
https://www.banokenkyujo.org/symposium2019
定非営利活動法人 場の研究所 住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3 電話・FAX:03-5980-7222 Email:info@banokenkyujo.org ホームページ:http://www.banokenkyujo.org