今回の「福島からの声」は、コールサック社より発行されている冊子、コールサック(石炭袋)112号より、詩人みうらひろこさんの詩「めまぐるしい日々」をご紹介させて頂きます。
ロシア軍によるウクライナ侵攻によって多くの方々が命を脅かされ、故郷を追われ、居場所を失いました。〈いのち〉の居場所を奪われた苦しみ。それは決して推し量ることの出来ない複雑さと深さを持っています。
今回のみうらさんの詩を読ませて頂いていると、原発事故で不条理に故郷を追われ、苦しい生活を余儀なくされている方々の、言葉に尽くせない想いが決して福島だけに止まることなく、紛争や災害で〈いのち〉の居場所を奪われ、存在の苦しみの中にある世界中の人々への深い共感へとつながっていることを感じさせられ、心を打たれています。
地球という私達の大切な〈いのち〉の居場所を守り、育みながら、互いを認め合い、共に生きていくためには、この深い共感力こそが大きな力になっていくのだと思っています。独裁者にも原発事故を起こした企業にも決定的に欠けていることです。
本多直人
めまぐるしい日々
みうらひろこ
まるでテレビのチャンネルを
せわしく変えてゆくように
日常生活がめまぐるしく変わってゆく
朝のおだやかな幸わせが
夜まで続いているという保証はない
ウクライナの兵士が
束の間の休息に隣の兵士と談笑していたが
一寸目を離したすきに
冷たい骸と化していく戦場
テレビのニュ-スを見ている私には
何もしてあげることも出来ず
ロシアの独裁者に
テレビに向かって罵詈雑言を浴びせても
彼の奴には届きもせず
痛くも痒くもないだろう
でも私達福島県双葉郡に住んでいた
かつての住民は
あの企業のトップ達に
放漫経営の非を認めさせようとする
言葉や意志を持っている
「津波対策はどうしてますか」
おずおず質問した私に言い放ったのだ
「大丈夫、これまで六メートル以上の津波は
この地方にはありませんでした」
六メートルの津波対策は万全とばかりの解答
それから四年後、その倍以上の津波が
私達の町の海岸を襲ったのだ
原発三基メルトダウン
漏れた放射能から故郷を追われ
地域の文化もコミュニティも奪われた。
過去に、ずうっと内陸まで津波に襲われ
その痕跡や裏づける地名も残っているのに
社員の学歴の高さを誇る企業のお粗末さ
廃炉まで四十年とか
原発事故は収束せず現在進行形のままだ
ロシア軍によるウクライナの原発攻撃
危ない、誰か止めさせる人はいないのか
これ以上めまぐるしい日々はごめんだ!