場の研究所メールニュース 2023年02月号

このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に送付させていただいています。

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■場の研究所からのお知らせ

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皆様

 

2023年も2月になりました。

大寒波の到来もあり、雪での被害が出ている地域のメンバーの方はご苦労されているのではと心配しております。そして、全国的に寒い毎日がその後も続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?

新年になってからもコロナの感染拡大や戦争の終結が見えないという忍耐力を試されるような悲しい状況が続いています。どちらも早く収束方向となり、明るい未来が予測できることを期待しております。

 

場の研究所の新年最初の第32回目の「ネットを介した勉強会」ですが皆様のおかげで、1月20日(金曜日)無事に終了することができました。テーマは『多様性と一様性』でした。現代の一様性の傾向が強い世の中にあって、多様性を重んじた居場所が拡大していくことを願っております。

勉強会にご参加くださった方々、ありがとうございました。

 

そして、2月の「ネットを介した勉強会」の開催は従来通り、第3金曜日の2月17日に予定しております。(第33回)

清水先生からの「楽譜」のテーマは『生死の無常』の予定です。

基本のテーマは「共存在と居場所」で進めていきます。

「ネットを介した勉強会」の内容については、参加されなかった方も、このメールニュースを是非参考にして下さい。

 

もし、ご感想、ご意見がある方は、下記メールアドレスへお送りください。今後の進め方に反映していきたいと思います。

contact.banokenkyujo@gmail.com

メールの件名には、「ネットを介した勉強会について」と記していただけると幸いです。

 

(場の研究所 前川泰久)

 

 

・2023年1月の勉強会の内容の紹介:

◎第32回「ネットを介した勉強会」の楽譜 (清水 博先生作成)

(オーケストラになぞらえて資料を「楽譜」と呼んでいます。)

★テーマ:「多様性と一様性」

◇隷属化原理について

・社会をガウス分布によって、違いを表すことができるような一様な人びとの集まりであると仮定して、その統計的な性質をもとにして様々な社会的施策が考えられている。

・Hakenの自己組織理論で使われているSlaving Principle 隷属化原理も要素の一様性を出発にしている。

・もしもすべての生活体(自律的に生活している要素)が同じなら、現在形成されている秩序にしたがって生きるのが望ましく、隷属化原理が成り立つ。

→そして人びとは「べきの論理」に支配されるわけである。

 

◇隷属化原理が成立しない条件とは

・しかし人間の身体を構成している臓器や器官となると、たとえば心臓と肺臓と肝臓のように機能がまったく異なるし、また互いに異なっていることが大切であるから、他の臓器や器官に合わせて活動するというわけにはいかない。

・しかし互いに身体の一部を構成しているので、他の臓器や器官の活きを無視して活動することもできない。

→生活体が多様で主体的であると、隷属化原理は成り立たないのである。

・それでは何かの原理があるかと言えば、私が思いつくのは西田幾多郎の矛盾的自己同一「一即多、多即一」くらいであり、それで何かが明らかになってくるというわけにはいかない。

・私は多様で主体的な要素(生活体)の集まりには、これから紹介していく時間差相互誘導合致という新しい法則を原理として使うことができると思っている。

 

◇未来の存在する居場所の重要性

・以前、前川泰久さんが本田技研で排出ガスによって大気を汚さない新しいCVCCエンジンを載せた車が創造されたのは、「子どもたちに青空を残そう」という言葉によって、様々な部署の人びとが互いの違いを越えて協力したからであるという趣旨のことを書かれていた。

・つまり、多様な要素(生活体)が現在存在している違いを無視して、未来に存在する青い空の居場所に誘導合致されて働いたのである。

・ここで大切なことは、多様な要素(生活体)の現在の状態とそれらが存在する未来の居場所の間には時間差があるということである。

(現在の居場所における要素の間の関係は決められていない。無限定である。)

 

◇時間差相互誘導合致について

・時間差があるために多様な要素(生活体)は居場所の未来に形成されるであろうと思われる秩序に向かって、自己の判断で生きていくことができるのであり、またその居場所の未来の状態の方も、要素(生活体)生活体の未来への希望に影響を受けて決まるわけであるから、多様な要素(生活体)生活体と居場所の間の関係は時間差のある相互誘導合致(時間差相互誘導合致)の形になる。

→このために居場所が名詞ではなく、相互誘導合致の活きをもった動的な名詞(動名詞)としてはたらくのである。

・多様な要素(生活体)は互いに未来に向かって進むことで協力できるところは協力し、互いに妨げ合わないことが必要である。

→つまり、未来の居場所と現在の要素(生活体)の集まりという時間差がある相互誘導合致である。

 

◇「〈いのち〉のドラマ」には時間差が必要

・このように居場所の時間を多様な要素(生活体)の時間からずらした時間差のある相互誘導合致によって生まれるのが「〈いのち〉のドラマ」である。

・「〈いのち〉のドラマ」では多様な要素(生活体)が多様な「役者」となり、そして未来の居場所の状態が「ドラマ」が到達する「舞台」の最終的な状態である。

・「ドラマ」では、多様な「役者」が同じ「舞台」に共存在して、互いに助け合って演じることが一般的である。

・そこで「ドラマ」にとって必要なことは、多様な要素(生活体)が存在する状態と居場所の最終的な状態の間に時間差が存在していることであり、その時間差がなくなれば「ドラマ」は停止して終わる。

 

◇身体における「〈いのち〉のドラマ」

・私たちの身体でも、多様な臓器や器官が共に「〈いのち〉のドラマ」を演じているのであり、その結果、もしも居場所としての身体の状態と多様な臓器や器官との時間差がなくなれば「ドラマ」を演じることはできないから、臓器や器官は共存在できなくなって生きていけず、死ぬことになる。

・要素(生活体)の一様性を前提にして導かれた隷属化原理は時間差がない状態で導かれたものだから、「〈いのち〉のドラマ」を演じている「生きているシステム」には使えないことになる。

→つまり多様な要素(生活体)の共存在を考えるときには使えないのである。

 

◇「〈いのち〉のドラマ」に必要な〈いのち〉の時間差与贈循環

・このことから分かるように、到達すべき居場所の状態を未来にもっていることが生き続けていくための絶対的な必要条件になる。

→その必要条件の下で生きていく形を生み出すために必要なことが多様な要素(生活体)から居場所への〈いのち〉の与贈である。

・自己の〈いのち〉を与贈しない「役者」は「舞台」に上がれない。「役者」たちの〈いのち〉の与贈は居場所に未来の「夢」に向かって生きる形を生み出すのである。

→居場所の未来に「夢」があることから、「〈いのち〉のドラマ」の進行に必要な時間差が生まれてくるのである。本田技研の「青い空」は「本田技研の夢」だったのである。

・未来の「夢」からの居場所の〈いのち〉の与贈循環を多様な要素(生活体)が受けると、共に生きていく目的が生まれて、「〈いのち〉のドラマ」を共演していくことができる。「ドラマ」の共演が共存在の形である。

→多様な要素(生活体)の現在と、居場所の未来を具体的に結びつけているのは時間差を踏まえた〈いのち〉の与贈循環(〈いのち〉の時間差与贈循環)なのである。

 

◇スパイラルな円環的時間によって進行する未来へのドラマ

・多様な要素(生活体)からの〈いのち〉の与贈によって、未来の居場所の〈いのち〉の自己組織が進むために、その状態を多様な要素(生活体)に循環してくる時間差与贈循環は要素(生活体)の現在を居場所の未来につないでいく活きをする。

・多様な要素(生活体)の〈いのち〉が連続的に与贈されていく結果、〈いのち〉の時間差与贈循環が継続的に進行する。その時間差与贈循環によって、居場所に「〈いのち〉のドラマ」が生まれて進んで行くのである。

・継続的な時間差与贈循環にともなって循環しながら進行する時間はスパイラルな形をした円環的時間であるから、多様な要素(生活体)が「役者」となって居場所を「舞台」にした「〈いのち〉のドラマ」が進行していくのである。

・多様な要素(生活体)の活きは互いに独立しているので、それを横から見ると、「舞台」としての居場所への「役者」それぞれの〈いのち〉の主体的な与贈になっており、互いに妨げ合うことはない。

・そして、そのドラマによって生まれるスパイラルな円環的時間にしたがって多様な要素(生活体)の〈いのち〉は時間的に同調しながら未来に向かって「ドラマ」の形で進行していくのである。

・多様な独立した要素(生活体)の〈いのち〉はその進行にともなって自己組織的につながっていき、直線的な時間のなかにあるときのように互いに妨げ合うことをしないのである。

 

◇時間差与贈循環により生まれる「幸せな生活を送っている」という意識

・未来における居場所と生活体の相互誘導合致に向けて、生活体から居場所への〈いのち〉の与贈がおこなわれ、居場所における〈いのち〉の時間差与贈循環が生まれる。

・この時間差与贈循環によって生活体の存在が居場所の活きによって救われ、幸せな生活を送っているという意識が生活体に生まれるのである。

・その時間差与贈循環によって現在の自己と未来の居場所の間に時間差相互誘導合致が起きるのです。

 

◇新しい夢の発見による新たな与贈の開始

・「夢」が叶えられれば、「〈いのち〉のドラマ」は終わるので、もしも多様な要素(生活体)が存在をつづけようと思うならば、昆虫の変態のように、新しい「夢」を見つけて、〈いのち〉の与贈をまた新しく始めなければならない。

・生長は「〈いのち〉のドラマ」の「舞台」に新しい「役者」が次々と参加をしていくことで、「舞台」が広がって、「ドラマ」を広げて同じ一つの「夢」を追い続けていくことに例えられる。

→では、夢が広がることに例えられるだろうか。

しかし居場所の〈いのち〉の自己組織の限界にぶつかれば、時間差与贈循環が行き詰まってスパイラルな円環的時間を生み出せなくなるので、「ドラマ」そのものを新しくする必要が生まれる。

 

◇居場所の未来の推定について

・日本の社会は多様な要素(生活体)が存在している社会に隷属化原理を押しつけようとしているように思われる。そのことから、「〈いのち〉のドラマ」を演じられなくなる人びとが多く、長い目で見たときにこの取り違えは、日本の社会の大きな弱点になる。

・時間差相互誘導合致のための居場所の未来の読み方だが、自分の分野の居場所には感情がはたらいて、冷静に読むことができないことが少なくないために、先ず自分と直接的には関係のない分野の未来を読んで、それを参考にして自分の居場所の未来を推定するのがよいと思う。

・あるいは世界全体の歴史的な変化を頭に置いてその原因を考え、そこから自分の居場所の未来を推測することもできる。

→自分が直接的に関係する分野のことしか関心を持っていないと、行き詰まることが多いのである。

・居場所の状態というものは、相互誘導合致によって、どんどん変わっていく。隷属化原理によって居場所を見ているときは、生活体(人びと)をみな同じ存在だと考えて、その存在の多様性を忘れている。

→であるから、自分が「どんな人間として生きたいか」ということが重要である。

 

◇身体における「夢」とは

・ここで居場所としての身体とそこで生きている多様な生活体としての臓器の関係に戻って考えてみよう。

・これは私たちの〈いのち〉がどのようにして終わるのかということにも関係しているので誰にとっても重要な問題である。

・身体の「夢」とは何であろうか?

それは多様な家族が非分離な状態で生活している家庭という居場所の「夢」と似ている。

→つまり、家庭と家族の存在が非分離につながっているように、私たちの身体と臓器や器官の存在も非分離である。

・そのことを前提として考えてみると、家庭の「夢」は家族を非分離に含めた調和的な生長であり、すべての家族の生長もそこに含まれている。これと同様に、身体の「夢」もすべての臓器や器官を含めた調和的な生長であると、私は考えている。

 

◇生長していくことと、生長が妨げられること

・生長は現在を未来につなぐ「終点を示されない〈いのち〉のドラマ」であり、すべての生活体を非分離に含めた居場所の時間的進行である。

→したがってそれは常に時間差相互誘導合致を原理とし、その法則にしたがって進行する。

・多様な家族を含めた調和的な生長が家庭にとって善であるように、身体にとっても、多様な臓器や器官を非分離に含めた調和的な生長が善である。

→したがって臓器や器官の深刻な病気や身体の老化によって、この調和的な生長を妨げるような変化が身体におきると、それは時間差相互誘導合致を否定する活きとなり、不善となって死の原因にもなっていくのである。

・まとめて考えると、居場所としての身体と、そこで生きている多様な生活体としての臓器や様々な器官の活きの調和的な非分離性が破れることが不善であり、それが死の原因になるのである。

 

◇人間の存在する地球について

・要素(生活体)の多様性とその居場所の状態の間には時間差があることが必要である。

・このことは人間と地球の関係にも当てはまる。それを考えるために必要な前提は、人間の存在と地球の状態の非分離な関係であると考える。

 

以上(資料抜粋まとめ:前川泰久)

 

               

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◎2023年2月の「ネットを介した勉強会」開催について

2023年2月の勉強会ですが、最初にお知らせしましたように、従来通り第3金曜日の17日に開催予定です。よろしくお願いいたします。

今回も、場の研究所スタッフと有志の方にご協力いただき、メーリングリスト(相互に一斉送信のできる電子メールの仕組み)を使った方法で、参加の方には事前にご連絡いたします。

この勉強会に参加することは相互誘導合致がどのように生まれて、どのように進行し、つながりがどのように生まれていくかを、自分自身で実践的に経験していくことになります。

参加される方には別途、進め方含め、こばやし研究員からご案内させていただき、勉強会の資料も送ります。

 

場の研究所としましては、コロナの状況を見ながら「ネットを介した勉強会」以外に「哲学カフェ」などのイベントの開催をして行きたいと考えています。もし決定した場合は臨時メールニュースやホームページで、ご案内いたします。

 

最期に、新年に際し、皆さまの健康とご多幸をお祈りしております。

今年も「場の研究所」をよろしくお願いいたします。

 

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今後の、イベントの有無につきましては、念のために事前にホームページにてご確認をいただけるよう、重ねてお願い申し上げます。

 

2023年2月5日

場の研究所 前川泰久