このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に送付させていただいています。
□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□
■場の研究所からのお知らせ
□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□
皆様
5月になり、初夏のような日や梅雨のような雨の日もあって季節の変化を感じるこの頃です。ただ、それも温暖化の影響も少なからずあって地球の悲鳴のようにも思います。
コロナについては、いよいよインフルエンザ相当の扱いになるようですが、まだ感染すると重症化の可能性もあり、自己防衛を継続して行く方が安全かと考えております。
世界情勢も相変わらずで、戦争もウクライナだけでなく他の国でも起きてしまい、早期の終結が見えない状況で残念です。
さて、場の研究所の第35回「ネットを介した勉強会」は、4月21日(金曜日)に開催いたしました。「楽譜」のテーマは『場所的編集力と逆編集力』でした。今回はより具体的な例も紹介されていたこともあり、議論が多く交わされたと思います。勉強会にご参加くださった方々、ありがとうございました。
なお、「ネットを介した勉強会」の内容については、参加されなかった方も、このメールニュースの内容を是非参考にして下さい。
そして、5月の「ネットを介した勉強会」の開催は従来通り、第3金曜日の5月19日に予定しております。清水先生からの「楽譜」のテーマは『生命と〈いのち〉』の予定です。基本のテーマは「共存在と居場所」で進めてまいります。
もし、ご感想、ご意見がある方は、下記メールアドレスへお送りください。今後の進め方に反映していきたいと思います。
contact.banokenkyujo@gmail.com
メールの件名には、「ネットを介した勉強会について」と記していただけると幸いです。
(場の研究所 前川泰久)
・2023年4月の勉強会の内容の紹介:
◎第35回「ネットを介した勉強会」の楽譜 (清水 博先生作成)
(オーケストラになぞらえて資料を「楽譜」と呼んでいます。)
★テーマ:『場所的編集力と逆編集力』
◇危機における大切な願いは「所有」から「存在」への変化
・大地震のような大きな災害にあったり、深刻なガンが疑われたりすると、何かを所有することよりも、ただ無事に在ることの方が大切な願いとして、心から望まれる。
→危機に出会うと、所有から存在へと心の願いが変化をするのである。
・現在のように地球という場所に〈いのち〉の危機が生まれると、長い間にわたって人間の願いであった生活における所有の拡大から、安定した生き甲斐のある存在へと人びとの願望が変化をしていくようになる。
→所有は自己の存在が確かめられた後で、人間の心に生まれる願いなのである。
・このことのために、所有の拡大を目指して進んで来た近代文明が転回を始め、存在の安定へと大きく方向を変えて進み出しているのが世界(地球)の現在の状態ではないかと、私(清水)は考えている。
◇場所に在ることの重要性
・自己が何かを持つということは他動詞であるから、人の活きは能動的になる。
・所有に向けての他動詞的な近代文明が地球規模で発達した結果生まれてきたのが現在のSNSやAIなどであり、このまま歴史が進めば、地球はAIによって動かされていく大きな自動機械になっていく可能性すらある。これは「生きもの」としての地球の存在の危機である。
・一方、存在することは自動詞であり、場所の活きを受け入れることによって、場所において生まれる自己の状態である。
若山牧水が
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
と歌ったように、もしも人が場所において在ることを失えば、孤独な存在をかかえて人生の孤独を悲しく生きていかなければならない。
・「生きもの」としての地球という場所において人びとが在ることが地球の自動機械化を止めることができる唯一つの方法である。
◇共存在について
・家族が家庭という同じ一つの場所に共に存在しながら、その家庭の歴史を創造して行くように、同じ場所において歴史的に在ることによって多様な人びと(生活体)が調和的に共存在することができる。
・それは場所を「鍵穴」とし、多様な存在者(生活体)の存在が相互に自己組織的につながって、場所の歴史を創造していく活きをその「鍵」とする時に、時間差相互誘導合致によって「鍵穴」となる場所に誘導されて、多様な存在者(生活体)の活きに調和的状態が生まれるからである。
・このことは西田幾多郎の矛盾的自己同一「一即多、多即一」と関係がある。ここで「一」は場所、「多」は多様な存在者(生活体)の存在である。
・また私は場所が多様な存在者を調和的にまとめて包む活きが場であると考えている。時間差相互誘導合致は多様な存在者がその〈いのち〉の活きを場所に与贈することによって生まれる〈いのち〉の与贈循環によって、人びとを未来の方から場によって包むことによって生まれるのである。
◇編集力について
・言葉を変えて表現すると、場所としての「鍵穴」には、「鍵」の構成部分である多様な存在者(生活体)の存在を調和的に編集して一つの「鍵」を構成する存在の編集力がある。その結果、矛盾的自己同一の形が生まれるのである。
・この編集力は同じ一つの場所の歴史を多様な存在者(生活体)が受け入れることによって生まれる場所の歴史を構成していく活き---同じ〈いのち〉のドラマの舞台で多様な存在者(生活体)が多様な役者となってドラマを共創していく創造的な形態形成の活き---によって生まれるものである。
◇〈いのち〉のドラマの創造的な形態形成の例
・小学校に入学する前の家庭における私自身の生活を思い出してみると、そこには涙のこぼれるような親の愛が生み出す〈いのち〉のドラマがあったと思う。それは幼い私の未来に常に向けられている両親の温かい〈いのち〉の与贈であり、その与贈の活きが家庭という場所における〈いのち〉のドラマの形態形成の力を生み出していることが直観的に感じられて、両親への私の純粋な信頼感のもとになっていた。
・このようなことも一つの例となるが、場所が生み出す存在の編集力---矛盾的自己同一の構造をつくる活き---は、存在者(生活体)の場所への〈いのち〉の与贈が生み出す〈いのち〉の与贈循環によって生まれる〈いのち〉のドラマの創造的な形態形成の活きであると思う。
・場所の編集力を受けてこそ、多様な存在者(生活体)が一つの「鍵」としてまとまることができるのである。皆さんの周りでも、このような例はきっと幾つも見つかると思う。
◇逆編集力について
・免疫力を含めて存在者の場所における存在者(生活体)の存在の創造力(構成力)のようなもの---場所による編集力とその編集力を多様な存在者(生活体)の身体が逆に想定して対応していく活きのようなもの---を考えないと、たとえば新型コロナによる感染者数のここ数年の変化はうまく説明できないのではないかと私は思っているが、人間や動植物の寿命まで場所の編集力を存在者(生活体)が逆編集する活きの影響を受けているかも知れない。
・場所とそこで生活している存在者の〈いのち〉は非分離でつながっているから、場所の〈いのち〉のドラマを共創していく動植物の〈いのち〉の活きとその存在の間には何らかの創造的な構成関係がある可能性がある。
・そこで人間が自己の人生をふり返り、さらに死へとつながる先を思いながら、「自己にこの地球という場所に存在を与えている活きは何か」と考えることは、無意味とは言えない。
→つまり、自己が役者として創造的に演じていく〈いのち〉のドラマの舞台とは具体的には何かということである。
・そしてその舞台ではどの様なシナリオにしたがってドラマがこれまで演じられ、また演じられていくのかを、自己の歴史を包む地球という場所(舞台)の歴史として具体的に考えてみるということである。
・これは役者としての自己が「ここで〈いのち〉のドラマを演じていく舞台(場所)とは何か」を考える逆向きの編集、逆編集である。
◇勉強会における逆編集のはたらき
・私たちの勉強会でも、2通目、3通目のメールの時に皆さんがそれぞれ互いの表現を引用されて「オーケストラ」の内部で互いに「演奏」している形がつくられている。この活きが逆編集に相当すると思う。
・編集の活きと逆編集の活きがあって、舞台(場所)と役者(存在者)の間に相互誘導合致の活きが生まれるのである。どちらか一方だけでは、相互誘導合致の形にはならないから矛盾的自己同一の形(場所的存在の形)は生まれない。
◇編集力と逆編集力を生む与贈循環
・場所の編集力は〈いのち〉のドラマの舞台に役者の表現を合わせるようにはたらき、また逆編集の活きは役者の表現に合わせて舞台を進める活きをする。
・若者が人生の進路を決めるときには、社会を場所とする逆編集の活きが必要になるし、その後の人生をいきいきと生きるためにも、その活きは必要になる。
・それは逆編集と編集の活きは自己の〈いのち〉の場所への与贈と、それによって生まれる場所的〈いのち〉の与贈循環によって生まれる活きであるからであり、またそれによって開かれていくのが創造的な調和の世界だからである。
・また少し特別なものになるが宗教の世界もこの形をとっている。
◇今の地球における場所の捉え方の問題
・場所的逆編集と編集の活きは様々な分野における調和的な創造力の源になる。
・動植物一般にも場所的逆編集力があり、そのために存在している場所と時間差相互誘導合致をしながら調和的に生きていくことができるが、人間が「この地球とはどのような場所か?」と考えて、その未来に合わせて〈いのち〉のドラマを創造的に演じながら生きていくために必要なものは、地球全体を場所とする逆編集力である。
・謙虚さがないために、その逆編集力が不足しておきているのがウクライナ戦争である。そもそも、「場所」の捉え方が間違っている。地球という場所の編集力の捉え方が誤っていることが根本的な原因であり、それは自動詞的な存在(在る)ではなく、他動詞的な所有(持つ)に目を付けていることに原因がある。
◇思想の根底に置くべきもの
・民主主義は国家という場所を逆編集する自由を個人に認める政治システムであり、専制主義ではその自由が認められず、絶対的な差を場所的な権力に置くシステムである。
・それは思想の根底に存在者(生活体)を置くか、それとも場所を置くかの違いがあるために生まれる差である。
→編集と逆編集のニュアンスの違いが人工的に生み出した絶対的な差であると考えてもよいかも知れない。
◇編集と逆編集としてのWBSの見方
・WBCで侍ジャパンが優勝した。全員の〈いのち〉のつながりによって生まれた温かい努力の結果だと思うが、最後は大谷翔平選手がエンゼルスで同僚のトラウト選手を三振に打ち取って優勝をし、大谷選手は大会MVPに選ばれた。
・この大会の表に見えた部分だけでなく、その裏に隠されている彼の素晴らしい逆編集の活きが大谷選手が主役となるような〈いのち〉のドラマのシナリオを書いたような気がする。
◇所有文明から存在文明への変化における重要ポイント
・所有(もつ)文明の時代から存在(在る)文明の時代への変化で重要になるのは、場所における〈いのち〉の与贈循環であり、それを引き出すのは、場所に対する謙虚な逆編集の活きだと思う。
以上(資料抜粋まとめ:前川泰久)
――――
◎2023年5月の「ネットを介した勉強会」開催について
2023年5月の勉強会ですが、最初にお知らせしましたように、従来通り第3金曜日の19日に開催予定です。よろしくお願いいたします。
今回も、場の研究所スタッフと有志の方にご協力いただき、メーリングリスト(相互に一斉送信のできる電子メールの仕組み)を使った方法で、参加の方には事前にご連絡いたします。
この勉強会に参加することは相互誘導合致がどのように生まれて、どのように進行し、つながりがどのように生まれていくかを、自分自身で実践的に経験していくことになります。
参加される方には別途、進め方含め、こばやし研究員からご案内させていただき、勉強会の資料も送ります。
場の研究所としましては、コロナの状況を見ながら「ネットを介した勉強会」以外に「哲学カフェ」などのイベントの開催をして行きたいと考えています。もし決定した場合は臨時メールニュースやホームページで、ご案内いたします。
---------------------------------------------------
今後の、イベントの有無につきましては、念のために事前にホームページにてご確認をいただけるよう、重ねてお願い申し上げます。
2023年5月1日
場の研究所 前川泰久