このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に送付させていただいています。
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■場の研究所からのお知らせ
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5月になりました。ゴールデンウイークでお休みの方もいらっしゃると思います。先月は桜の開花が遅れていたのに、このところ急に暑くなり、初夏のような気候になってしまいました。
さて、4月の勉強会は皆様の協力でGoogleシステム変更にも対応もでき、ほぼトラブルなく開催できました。ありがとうございました。
4月の勉強会は第3金曜日の4月19日に開催いたしました。
テーマは『人間の進化と共存在』でした。ご参加してくださった方々、ありがとうございました。
4月のテキスト(楽譜)の内容については、参加されなかった方も、このメールニュースを是非参考にして下さい。(オーケストラになぞらえて資料を「楽譜」と呼んでいます。)
そして、5月の「ネットを介した勉強会の開催は第3金曜日の5月17日を予定しております。よろしくお願いいたします。
清水先生の「楽譜」のテーマは『与贈・与贈循環』の予定です。
もし、ご感想、ご意見がある方は、下記メールアドレスへお送りください。今後の進め方に反映していきたいと思います。
contact.banokenkyujo@gmail.com
メールの件名には、「ネットを介した勉強会について」と記していただけると幸いです。
(場の研究所 前川泰久)
・2024年4月の勉強会の内容の紹介:
◎第46回「ネットを介した勉強会」の楽譜 (清水 博先生作成)
★楽譜テーマ:『人間の進化と共存在』
◇人間は服と同様に社会に包まれて生きていく存在
・人間は自分たちでつくった服を着て生きている生物である。しかもその服装は歴史的に変化をしていく。他の動物と異なって人間は服を捨てて生きることはできない。したがって、服が破れてしまうと、生きていくことができない。
・これと同様に、人間は社会をつくり、その社会に包まれて生きていく存在である。その社会の活きが壊れてしまうと、その社会で生きていく生物として生きていくことができない。したがって社会の活きが壊れてしまわないように、人間は創造によっては社会を歴史的に進化させていく。
・文化人類学の研究によれば、社会の歴史的な進化に失敗した数多くの民族は急速に絶滅して地球から姿を消している。
・このようにして、社会の進化そのものが、その社会と非分離な形で生きていく人間の生物学的な進化に含まれているのである。人間の身体も生物学的に進化をしていくと思われるが、それ以上の速度で社会が進化をしている可能性がある。
◇、社会的な共存在ができる新しい社会の必要性
・このように人間の社会の存在は個人の存在と非分離な存在であるから、人間の〈生命〉には社会の状態が含まれている。創造はこの社会を進化させる活きであるから、個人の創造は社会の他の人間によって認められて、新しい共存在の形を生み出していく。
・共存在の形に変わらない発明や発見は創造とは言えない。人間の〈生命〉が他の動物の個体の生命に相当するのである。
・したがって、〈生命〉が厳しい状態に置かれると、社会的な共存在ができる新しい社会の形の創造が求められて、〈生命〉の与贈循環によって生物学的進化の機会が生まれる可能性が生まれるのである。
・このような状態で生まれるのが次の時代を開いていく新しい宗教や思想である。例えばフランス革命がその例である。
◇厳しい時代に生まれた宗教や文学の意義
・日本では、歴史的に見ると鎌倉時代は最も厳しい時代であり、鎌倉を調べた人類学的な調査では、その時代の日本人の平均年齢は18歳であったと言われている。人々の心もすさんで、関白の息子が御所に放火をしたと言われている。
・この鎌倉時代に現在の日本の宗教の骨格となっている法然による浄土宗、道元による曹洞宗、日蓮による日蓮宗、親鸞による浄土真宗が生まれているのである。これらの宗教は〈生命〉に関するそれぞれの固有の思想と共に現代まで受け継がれて続いている。
・また運慶による国宝である無著菩薩と世親菩薩の立像仏が奈良の興福寺(法相宗)に納められており、自己の〈生命〉をかけて道を求めた人々の面影を現代まで伝えている。
・さらに世界最古の「災害文学」と言われる鴨長明の方丈記は、古くて新しいさまざまの災害を詳しく文学的に伝えて、それらと共に社会的に存在していく人間の生き方を示している。
◇〈生命〉の与贈循環とそれに続く〈いのち〉の与贈循環の必要性
・これらの創造は宗教や思想の領域に生まれるものであるために、それだけでは社会的にいつまでも自立していくことができない。そこでさらに、社会全体に広がって人間の日々の生活に結びつく文化面での創造が必要になる。
・それを実行するのが社会を場所とする〈いのち〉の与贈循環である。それは〈生命〉の思想の創造によって生まれた「高い皺」を社会全体にアイロンをかけて広げていく作業である。
・生活に関するさまざまな新しいアイデアが創造されて、「日本の場の文化」と言われているものが生まれたのはこの場面である。もしも、この〈いのち〉の与贈循環がうまくいかなければ、共存在の場所である社会としては生きていけないので没落して消滅してしまう。民族として継続的に生きていくためには、どうしても〈生命〉の与贈循環とそれに続く〈いのち〉の与贈循環による創造的な共存在活動を成功させなければならない。
◇二種類の与贈循環を繰り返すことによる〈生命〉の進化
・〈いのち〉の与贈循環が何百年も続くと、それなりの強者と弱者が生まれて社会的矛盾が生じ、社会における人々の共存在を困難にする。
・もしも政治的にその矛盾を乗り越えることができず、その強弱が固定化されてくると、方丈記に書かれているように社会が不安定化されていき、その矛盾を乗り越える新しい思想が求められる状態が生まれて、新しい思想を〈生命〉の与贈循環に戻って創造することが求められるのである。
・このようにして、人間は二種類の与贈循環を繰り返しながら、社会を創造的に進化させ、その進化に乗って自己の社会における〈生命〉を進化させていくのである。
◇「二種類の与贈循環と場所的共存在」の法則の重要性
・このように考えていくと、「二種類の与贈循環と場所的共存在」は社会的生物である人間の生物的進化を考える上で、もっとも重要な法則であることが分かる。
・そしてその法則によって歴史的な変化を考察していくことによって、現代におけるさまざまな民族の運命を文化人類学的に考えていくことができると思う。
・日本民族について言えば、場の文化を広く支えてきた〈いのち〉の与贈循環を比較的安定に継続していくことに、政治的な努力をはじめ人々の問題意識が向かっていて深刻な矛盾は現在のところ見られないが、その反面、新しい思想を創造する〈生命〉の与贈循環への精神的準備がほとんど見られないという状態ではないかと思う。
・短期的には安定しているけれど、長期的には不安な状態―思想的に「鎌倉時代」を乗り越えられないような状態―である。
◇明るい未来が到来する可能性を示す新しい思想の必要性
・社会的生物として進化をしていく人間という概念をつかった「二種類の与贈循環と場所的共存在」という存在の法則を、国を場所と考えてその国の民族について上記の様に活用していくことができるばかりでなく、現代では、さまざまな国の人々が地球を場所として一緒に存在していくことが重要であると考えられる。
・そのように考えると、さまざまな宗教的対立と国境を広げようとする意図から生まれる様々な紛争を抱えながら、しかも地球における人間を含めたさまざまな生物の共存在の基盤をくずしていく温暖化現象を回避する明るい見通しが立っていない人間の〈生命〉の現状に気持ちが暗くなる。
・ここで必要なのは、世界全体のさまざまな人々に明るい未来が到来する可能性を示す新しい思想である。それは地球を場所として人間ばかりでなく、さまざまな生物が共存在する状態をつくり出すものでなければならない。
・したがって、地球という場所への人々の〈生命〉の与贈を踏まえていなければならない。国や宗教的場所への〈いのち〉与贈を超えて、地球への〈生命〉の与贈を実行することができるかどうかがその問題の根底にある。
◇社会的生物が共存在する場所として社会をつくる創造的な活きからの出発
これまで人間は個人という個の単位から出発して、その集まりとして社会を考えてきたが、社会的生物が共存在する場所として社会をつくる創造的な活きから出発して、〈生命〉の与贈を通じて個人の存在を共存在的に考えていくという、逆の方向の捉え方をここでは指摘したことになる。
・我々の目の前の深刻な共存在矛盾は個人の権利がぶつかって生み出している矛盾であるから、思想の出発点として個人に拘泥してその存在を考えている限り、乗り越えることができないのではないかと思う。
・必要なことは、人間自体が社会を通じて生物体として生物進化をすることである。
(資料抜粋まとめ:前川泰久)
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◎2024年5月の「ネットを介した勉強会」開催について
5月の勉強会ですが、最初にお知らせしましたように、第3金曜日の5月17日(金曜日)に開催予定です。よろしくお願いいたします。
今回も、場の研究所スタッフと有志の方にご協力いただき、メーリングリスト(相互に一斉送信のできる電子メールの仕組み)を使った方法で、参加の方には事前にご連絡いたします。
この勉強会に参加することは相互誘導合致がどのように生まれて、どのように進行し、つながりがどのように生まれていくかを、自分自身で実践的に経験していくことになります。
参加される方には別途、進め方含め、こばやし研究員からご案内させていただき、勉強会の資料も送ります。(参加費は無料です。)
場の研究所としましては、コロナの状況を見ながら「ネットを介した勉強会」以外に「哲学カフェ」などのイベントの開催をして行きたいと考えています。もし決定した場合は臨時メールニュースやホームページで、ご案内いたします。
2024年5月1日
場の研究所 前川泰久