このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に送付させていただいています。
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■場の研究所からのお知らせ
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6月になりました。かなり暑い日が増えてきましたが、急に涼しい日もあり、皆様体調を崩されないように、是非お気をつけください。
さて、5月の勉強会は第3金曜日の5月17日に開催いたしました。
テーマは『与贈・与贈循環』でした。ご参加してくださった方々、ありがとうございました。
「ネットを介した勉強会」としては30名に迫るレベルの参加人数で過去最高でした。お陰様で多くの議論ができて有意義だったと思います。場の研究所として感謝しております。
5月のテキスト(楽譜)の内容については、参加されなかった方も、このメールニュースを是非参考にして下さい。(オーケストラになぞらえて資料を「楽譜」と呼んでいます。)
そして、6月の「ネットを介した勉強会の開催は第3金曜日の6月21日を予定しております。
よろしくお願いいたします。
清水先生の「楽譜」のテーマは『アナログとデジタル』の予定です。現代の大きな課題を議論したいと思います。
もし、ご感想・ご意見がある方は、下記メールアドレスへお送りください。今後の進め方に反映していきたいと思います。
contact.banokenkyujo@gmail.com
メールの件名には、「ネットを介した勉強会について」と記していただけると幸いです。
(場の研究所 前川泰久)
・2024年5月の勉強会の内容の紹介:
◎第47回「ネットを介した勉強会」の楽譜 (清水 博先生作成)
★楽譜テーマ:『与贈・与贈循環』
◇与贈・与贈循環について
・与贈とはどういう活きであり、与贈循環とはどう言う現象であるかというと、〈いのち〉の与贈とは個物的な生命体が場所的な生命体をつくって、その場所的生命体を全体として、自身がその一部分になる現象である。
・そして場所的生命体が新しい全体とし個物的生命体をその一部分としてはたらく自己組織現象が与贈循環である。
・複数の個物的生命体が同じ場所に与贈することによって、その共存在状態が生まれるが、共存在している個物的生命体は、一つの場所的生命体のそれぞれ固有の部分となっているのである。〈生命〉の与贈循環は、地球を生命体とする場所的生命体の自己組織現象である。
◇存在が厳しいときにおける与贈の必要性
・日本の鎌倉時代のように、存在が厳しくなったときに、個物的生命体が生きつづけていくために必要なことは〈いのち〉の与贈による場所的生命体の自己組織である。
・現代史を生きる私たちにとって必要なことは、実存生命(〈生命〉)の与贈によって地球を場所的生命体として、そこにその〈生命〉を構成する一部分として共存在することである。
・私たちは、そのことを実践していく思想の創造を迫られている。状況が厳しいときほど大きな与贈が必要になるのである。
◇現代に必要な近江商人の「三方よし」の哲学
・近江商人の「三方よし」という商売の哲学はこのような状況から生まれた考えであり、大変参考になる。商売は「売り手よし」、「買い手よし」という売買の関係だけでは終わらず、さらに「世間よし」が加わった、「三方よし」の形にならなければ、長く続かないという教訓である。
・現代の資本主義経済では、「世間よし」に相当するものが「地球よし」である。これが非常に厳しい状態にあるために、10年先の地球の気候がどうなっているかは、ほとんど予想がつかない。
・「地球よし」の状態が生まれるために必要なことは、〈生命〉の与贈循環の形が資本主義経済に生まれて、地球における個物的生命体の「共存在もよし」という「三方よし」の形が守られていくことである。現状では、明るい見通しが立たない。
◇「〈生命〉のドラマ」と「〈いのち〉のドラマ」
・地球に生きるさまざまな個物的生命体は地球を舞台にして、地球の歴史と共に「〈生命〉のドラマ」を演じてきた。地球に共存在している多種多様な生きものは、その役者に相当し、場所的生命体としての地球の状態はその舞台の状態に相当する。
・この「〈生命〉のドラマ」は非常に多くのローカルな「〈いのち〉のドラマ」から構成されており、その「〈いのち〉のドラマ」は互いに影響を与え合いながら、さらに「〈生命〉のドラマ」に影響を与えている。その状態は非常に複雑である。
◇〈生命〉のドラマの舞台 と〈いのち〉のドラマの舞台
・歴史的に見ると、先ずさまざまな地域における〈いのち〉のドラマが注目され、最近になって温暖化現象によって、地球全体における〈生命〉のドラマが注目されるようになってきた。
・しかし宗教や経済や政治における〈いのち〉のドラマの舞台はそのまま続いて人間の生活をそれなりに支えているわけであるから、人間は地球全体という〈生命〉のドラマの舞台をさまざまな〈いのち〉のドラマの舞台に押し込めようとしてあがいているのである。
◇風船モデルによる紛争の原理説明
・それは小さな風船のなかに大きな風船を押し込めようとすることに似ており、必ず小さな風船の境界に相当する〈いのち〉のドラマの舞台の境界に問題が生まれる。この風船の境界の衝突のような紛争は既にウクライナやパレスチナで始まっている。
・地球規模で「三方よし」の生き方を創造して、大きな風船の中に小さな風船を入れて整理をしていく方法を考えない限り、〈いのち〉のドラマの舞台の境界における紛争の発生を避けられないのが現代の人間の運命である。
・必要なことは、地球全体を場所的生命体とする〈生命〉の与贈循環であるから、地球への〈生命〉の与贈を歴史的な〈いのち〉のドラマの舞台への与贈に優先させることである。
◇境界を越えた与贈の必要性
・このように境界を越えておこなわれる与贈には、その境界における対立を消す活きがありる。
・現代の最大の問題は〈生命〉という個物的な生命としての存在をかけた国家の境界における衝突であるから、それを避けるためには、互いに〈生命〉を与贈し合うことによって、その境界を越えて〈生命〉を広い場所的な〈いのち〉によってつないで、共存在の形をつくっていくことが必要である。
◇地球規模の「三方よし」
・そのことから、地球規模における「三方よし」の生き方を創造するためには、相互与贈による相互誘導合致の活きが必要になる。そのことは見方を広げて考えると、国家という境界を越えておこなわれる各国家の場所的生命体である地球への〈生命〉の与贈が必要になっているということである。
・このことを、地球という場所的生命体を一方とする「三方よし」の形にすることが、個物的な生命体としての各国家が存在するための必要条件になっているのである。
◇地球への与贈の必要性
・伝統的な宗教を思想的なベースとしてその上に現代の国家としての政治的な方針を立てようとすることは、〈いのち〉の与贈循環という風船のなかに、場所的生命体としての地球の〈生命〉を押し込めることに相当するので、上記の「風船モデル」が予見するように、国家としての境界に深刻な地球レベルの紛争を生じる。
・地球への与贈ができないということは、地球に深刻な共存在の限界が生じている現代では、個物的な生命体としては国家が存続していくことができないということを意味している。
◇現代における「三方よし」の創造の重要性
・独裁というという国家の体制は、〈生命〉の与贈を否定する形になっているので、境界に紛争を発生してしまうため、地球における共存在は不可能である。
・それでは資本主義経済に立脚する民主主義はどうかと考えると、「三方よし」の形をその経済システムがつくることができるかどうかにかかっている。
◇実存生命〈生命〉から出発する議論の必要性
・「自己中心的な世界を否定することで、自他非分離の宗教的世界における自己の存在を肯定される」という鈴木大拙や西田幾多郎の逆対応の論理は、非常に重要な真理を語っているわけであるが、それだけでは「小さい風船」の壁(宗教の壁)は越えられない。
・何が足りないのかというと、世界の境界についての考察が足りないのである。小さい「風船」の境界を思考が越えて、大きい風船の境界に至るためには、実存生命〈生命〉から出発する議論が必要なのである。
・これが現在の地球の状態である。風船モデルはこの境界について考えるのを助けるモデルである。
◇場の研究所の役割
・場の研究所も与贈と与贈循環を場の研究のベースとすることができるかどうかに、その未来がかかっているのである。
(資料抜粋まとめ:前川泰久)
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◎2024年6月の「ネットを介した勉強会」開催について
6月の勉強会ですが、最初にお知らせしましたように、第3金曜日の6月21日(金曜日)に開催予定です。よろしくお願いいたします。
次回も、場の研究所スタッフと有志の方にご協力いただき、メーリングリスト(相互に一斉送信のできる電子メールの仕組み)を使った方法で、参加の方には事前にご連絡いたします。
この勉強会に参加することは相互誘導合致がどのように生まれて、どのように進行し、つながりがどのように生まれていくかを、自分自身で実践的に経験していくことになります。
参加される方には別途、進め方含め、こばやし研究員からご案内させていただき、勉強会の資料も送ります。(参加費は無料です。)
場の研究所としましては、コロナの状況を見ながら「ネットを介した勉強会」以外に「哲学カフェ」などのイベントの開催をして行きたいと考えています。もし決定した場合は臨時メールニュースやホームページで、ご案内いたします。
2024年6月1日
場の研究所 前川泰久