今回の「福島からの声」は、詩人、鈴木正一さんの詩集「あなたの遺言~わが浪江町の叫び~」から「ふるさとの復興」をご紹介させて頂きます。
一月一日に起きた能登半島地震、そしてそこに追い打ちをかけるように続いた大雨による被害の甚大さは、改めて日本という国に棲むことの厳しさ、そして今後の復興の在り方を深く問いかけられるものとなりました。
東日本大震災、そして福島第一原発事故からの復興が叫ばれて13年。原発事故で根こそぎ奪われたのは人々の営み、暮らしであり、それは、長い年月をかけて、あらゆる生きものたちと共に歴史を紡ぎながら共に育み、築いてきた故郷の〈いのち〉です。
鈴木さんの今回の詩からは、「被災者に寄り添う」という言葉を、政府や東電にとっての都合の悪い問題の盾にするようにして物理的な復興だけが先んじられ、生活体としての人の〈いのち〉が軽んじられてきたことへの強い憤りが伝わってきます。
「ふるさとの復興」とはいったい何か?私たちは、今だからこそ〈生命〉の立場から問い直す時期に来ているのだと思います。
(本多直人)
ふるさとの復興
鈴木正一
大平山霊園 災害公営住宅建設
「道の駅なみえ」オープン 請戸漁港再建
常磐線全線開通 世界最大水素工場や
県最大酪農牧場計画策定等々
視える確かな 復興事業
中には 待ち焦がれる帰還を
疎外する施策も
二万千人の町民
避難指示解除四年で 帰還者七%
創生小中学校開校
千七百人程の児童生徒は 二六人に
小中学校 誰しも抱く心の拠り所
請戸小学校は 震災遺構で保存決定
五つの小中学校は 閉校式もなく解体決定
住民意向調査の結果
「帰還しない」は五十四・九%
過半数を超えた
「要介護認定率」は
郡内最大の増加 二十三%超
住んでいない避難住民からも
固定資産税や住民税を 徴収
まるで 核災がなかったかのよう・・・・・
余にも理不尽な 政府の圧政・収奪
更に コロナ禍での 生活困窮
「被災者に寄り添う」?
喜びより 恨めしさがつのる
ふるさとの復興