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今回の「福島からの声」は、詩人みうらひろこさんの詩集「ふらここの涙~九年目の福島浜通り~」から「忠犬たち」をご紹介させて頂きます。
現在、場の研究所の勉強会では、〈生命〉の与贈循環と〈いのち〉の与贈循環を大きな軸として議論が進められています。生命は、あくまで、その個体に限定して様々な問題を考えていきますが、研究が深められている〈生命〉は、「生命だけでなく、その生命を支えているモノとしての存在も含めるもの(清水博)」です。
例えば、厳しい冬を超えた木々から新芽を出した新緑の葉が、やがて青々とした葉となり、紅葉し、そして枯れ、森の土に還るという〈生命〉が消えていく過程からは、地球における生きものとの深くつながった、切り離せない共存在としての〈生命〉の姿をみることが出来ます。
今回、ご紹介する「忠犬たち」は、原発事故によって失われた〈生命〉を彷徨う生きものたちの姿を心に浮かび上がらせ、私たちに問いかけてくれています。
原発避難で人が消えた町に残された生きものたちの瞳から訴えてくるものとはいったい何でしょうか。〈生命〉の与贈循環が断たれるということは地球という〈生命〉を失うことにもつながっていきます。
無人の地でけなげにも待っている忠犬たちの姿からは、失われた「人との共存在の場所」を彷徨う生きものの哀しみを感じずにはいられないのです。
本多直人